序曲

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「なるほど……ね」 雨宮が指差した場所、つまり下の階に来た竣は額に冷や汗を、そして両手にはクラシックギターとエレキギターを抱え、目の前の惨状に溜め息を吐いた。 そう、楽器だらけのこの音楽室で 「先生がここ使うから楽器を上に移動させろって……」 淡々とした口調。それは申し訳なさそうにする訳でも感謝を表した訳でも無い、ただ事実を伝えているだけの声。少しは感謝でもして欲しい物だが、自分から言えば間違い無く『やなヤツ』と言うイメージを植え付けてしまう 別にそれでも構わないのだが、目の前で両手いっぱいにシンバルを持つ雨宮を見ると健気な感じがしてしまい、胃の中へ唾液と共に飲み込む他無かった。 「で、何で一人でやってるんだ?」 不満ばかり出て来そうなこの口を紛らわす為に一番疑問に思っていた事を口にする。軽音部なら確か10人はいた筈であり、雨宮が一人でやっているのは不思議としか言いようが無かったからだ。 だが、雨宮は少し考える素振りを見せ 「みんな帰っちゃった。用事があるんだって」 みんな大変だねとでも聞こえて来そうな、そんな口調で首を傾げていた。だが―― 「はぁ!?おかしいだろ!!10人が10人共用事があるわけ無いだろ!?そんなの面倒臭いから『適当な理由付けちゃえ~』何て小学生でも分かるわ!」 竣は息を切らしながらも一気に喋りきる。いや、まだ言いたい事はあったのだが雨宮がどんな反応をするか気になり、一旦区切る。 だが、雨宮の反応は竣の予想を遥かに超えていた。それはもう360…いや、359度くらいに 「え?だってみんな音楽好きだから軽音部来たんだよ?だからそんな事無いよ」 力説するが如く竣の袖引き、顔を寄せて来る雨宮に少しドキッとしてしまうが、その考えは少しばかり…いや、大変おかしいとやんわりと説明してあげる。 「あのな、例えサッカーが好きなヤツがいても、玉拾いが好きとは限らないんだ。分かるだろ?」 何で柄にも無くこんな事をしているのか面倒臭く感じながらも雨宮に目を移すと 何故かキョトンとしていた。それを見た瞬間悟ってしまった。恐らく、いや、雨宮は頭の回転が悪くそして音楽馬鹿なのだと
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