廻り合いと逃走劇

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 ハシルア王国、王都ハシルアント。世界最大の都市とも言われ、様々な人や物がきらびやかに溢れる都。  その素敵な都市と言う表の噂に惹かれて、夢見がちにこの都市へと引っ越して来る人。  運が良ければ表通り三番街で職に恵まれ、狭い店の一つぐらいは持てる。運が悪ければ、俺みたいな奴らが住まう裏通りに腰を落ち付ける術を求めるしかない。  この人が溢れかえる都で成功するのは、腕力、学力、財力を持つ人間。ごくわずかな人間のみ。  そんなごくわずかな人間の懐を狙うのが、俺の仕事な訳でしてね。  ずばり、今日は金貨が三枚も入っている財布が俺の手の中に有るわけですよ。  恰幅の良さそうなおじ様、いえ、肥えすぎなおっさん、いけませんなぁ。こんな大金の入った財布に紐も付けずに持ち歩いちゃあ。表通りとはいえ、そこは俺みたいなスラム街の住人の狩り場なのですよ。  これで十日は遊んで暮らせる。これも普段の行いが大変よろしい俺への神様からの御褒美です。今日の仕事はこれ一つでお仕舞い。裏通りに帰って、場末のバーで昼間から景気良く過ごすとしよう。
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