8人が本棚に入れています
本棚に追加
真由は焦点の合わない目で虚空を見つめながら、床に落ちた涙も乾いてしまうほどの間、ただ謝り続けている。
バスルームは静かになっており、それは謝り続けているからではないかと思えていた。
謝る事を止めたら男はまた暴れ出すのではないか。
激しく暴れた男は拘束を断ち切ってしまい、自分を張り倒して馬乗りになり、体重をかけて首を締め私を殺すのではないか。
または、私を縛りあげ、仕返しに監禁されるのではないか。
毎日、朝から晩までおもちゃにされてしまうかも知れない。
悪い妄想が次々と沸いてきては真由を追い詰めていく。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……。」
あと何回謝ったら許してもらえるのかも分からず呪文のように唱え続けるしかなかった。
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
不意に机の上の充電器に繋がれた携帯が震え出す。
真由は首だけ動かして部屋の携帯を眺めた。
携帯の震える音が止まず、それが電話の着信だと気が付く。
最初のコメントを投稿しよう!