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プロローグ
世界には、人間の優れた頭脳やアンドロイドが持つ高性能な人工頭脳でさえ、理解できずに解明されない不可解な事件・事故・事象がいくつも存在している。
現実という世界にありながら、現実とはかけ離れた摩訶不思議で非現実的な現象。それに科学的根拠を付けようと、多くの科学者達がその現象に挑むも、その謎が解明されることはなかった。
現実という日常のすぐ側には、非現実という非日常の世界も広がっている。それは、見方を変えるだけで絵柄が変わる騙し絵のような世界。
表があるなら裏もあるように、この世界にも表の世界と裏の世界が存在する。
現実世界が表の世界と表すならば、非現実世界は裏の世界である。
表の現実世界と裏の非現実世界。この二つの世界の境界は、ヒトが非現実世界の扉を叩く時、そこは既に裏の世界への入口となる。
誰かが裏の世界を垣間見て非現実な世界を知った時、ヒトは裏の世界を〝噂話〟として世界に広げていく。そして、噂を聞いた者は裏の世界の真実を追い求める。
しかし、その真実が解明されることはなかった。
真実が明かされない不可解な謎は、やがてある種の〝伝説〟として人々の間に語り継がれていくこととなる。
伝説は不可解な現象や事象だけに留まらず、時には大昔の将軍が残した埋蔵金や、不老不死を与える聖杯等、人間が夢に見るような話も含まれ、不老不死を与える聖杯に至っては軍隊が聖杯の行方を探すほどでもあった。
人間という現実世界で生きる存在が非現実世界に夢を抱き、追い求める。それは、旧時代を生きぬいた者ならば、誰もが知る事実である。
だが文明に発展が進み、あらゆる根拠に科学的根拠を無理矢理付けた時、人間は非現実世界に夢を抱かなくなる。
進み過ぎた文明は、かつての表の現実世界と裏の非現実世界のバランスを崩し、その境界さえも歪ませ、世界は次第に現実一色だけで染められてゆく。
古き時代を捨て、新時代を造り上げようとする今の人間には、もはや非現実世界は幻想として淘汰されるべきである存在とされ、これまで語り継がれてきた伝説も皆無かったことにされた。
もし、この世界の神がこの光景を目の当たりにしたならば……。
「人間が自らの意思で望んでこの道を選んだ以上、この先何が起きたとしてもそれはその道を選んだ人間自身の責任だ。私にそれをとやかく言う権利なんて無いよ。……全ては自業自得の結果なのだから」
と、何とも無責任な発言を残すだけであろう。
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