119人が本棚に入れています
本棚に追加
黒羽丸さんは慌てて湖を覗きこむ。
「…何をしたんだ?」
湖の中で私は空気の塊の中にいた。
いや、ボールのような空気の中にいると言ったほうがわかりやすいだろうか?
「私は大丈夫です!これなら濡れないし、息もできますし」
「そ…そうなのか…」
「はい!私はここで絵を描こうと思います」
「そうか…じゃ、俺はここで待っている」
「わかりました…暇かもしれないので…帰ってもらってかまいませんよ?」
「いや、いい」
「そうですか…?わかりました…」
私はそう言って絵に取りかかる。
湖の中はやはりとても美しかった。
色々な水草があり、色々な魚が泳いでいる。
動いているものを描くのは大変だが、私は集中してかきはじめた。
そして2時間後、私は描き終わった。
「終わった…うん、上手く描けた…かな?」
私が湖から上がると、黒羽丸さんはきちんと待ってくれていた。
「あの…終わりました」
「そうか…」
「あの…みてくれませんか?」
「あ?…いいが…?」
私は描いた絵を黒羽丸さんに見せた。
「……………」
黒羽丸さんは絵を見るなり無言になった。
「く…黒羽丸さん…?」
「…すげぇな…」
「…?」
「上手だ…」
「ぁ…ありがとうございます……」
私は褒めてもらったことが嬉しくて、微笑んだ。
「…っ」
黒羽丸さんはプイッと顔を背けた。
「どうしました?」
「い、いや…何でもない…」
心なしか、黒羽丸さんの顔が赤く見える。
(……何なんだ…あいつは)
黒羽丸は蓮花の笑顔を見て、何故か顔が熱くなるのを感じた。
「それじゃ、帰りましょう」
「…そうだな」
そうして私と黒羽丸さんは奴良組へ戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!