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~光と琴~
「光夜」
「なんだ?主よ」
「光夜は今、私の中にいるんだよね?」
「そうだが?」
「じゃあ、私が感じていることもわかるの?」
「まぁ、だいたいはな」
「だいたい?」
「主は稀に感情の制御ができなくなることがあるのだ…そのときは主が考えていることなど、手にとるようにわかる」
「そう…なの…」
「ああ…我が主を感じて思った最初のコトは…」
光夜は少しいいよどんだ後、けう言った。
「……寂しい、辛い、死にたい…と……」
「っ!?」
「主よ……あまり無理はしてくれるな……ソナタの心は崩れかかっている…」
「……そか…」
私は自嘲するように笑った。
(弱いなぁ…私は…)
「主、主は一人ではないのだぞ」
「え?」
「我がいる、だからそんなかおをしないでくれ……頼む…」
(見ているこっちの胸がしめつけられる…)
「…そう、だね……ごめん」
私は俯いてしまった。
「主……」
その時、光夜は私の頭を撫でてくれた。
ゆっくり、ゆっくり…あやすように。
「光…夜………」
私は目に涙がたまったまま光夜を見上げる。
すると光夜は優しい顔で私を見つめていた。
私はその時、思いだしたのだ。
家族のぬくもりを。
忘れていた、あの温かいぬくもりを。
(光夜は…光夜は私の…大切な、たった一人の家族…)
私は会って間もない光夜を自然とそう思えるようになっていた。
これも、光夜のおかげかもしれない。
そして光夜は私に思いだしさせてくれた。
家族といる喜びを。
「光夜……ありがと」
「ん?」
「私…こんなに話をしたの何年かぶり……それに…撫でてくれて…ありがと…」
私は微笑みながら言った。
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