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俺はレイナードを倒す為に暗殺や工作活動、傭兵と様々こなし情報入手の為に手を汚してきた。
今更安息なんて求めてなんかいない。
いつかはこの生活も終わり、いつかは昔と同じ日々に戻るのだ。
アカシックタブレットの守護の任を放棄し、私怨でこの世界にやってきた俺。
タブレットとは則ち宇宙に広がる全ての情報を漏らすことなく記した碑文。
別名アカシックレコードととも呼ばれている。
タブレットの欠片をこの世界にばらまき、聖域の神と戦う兵士を作り上げようとした兄のレイナード。
レイナードの目論み通り世界には魔法文明が起こり、魔導師という存在が現れ、レイナードの手駒が増え戦争が起きた。
時間にして今から二十年前。
俺はレイナードを追って聖域を出て以来、ずっとこの世界に留まっている。
守護魔導師が聖域を離れることは最大のタブー。
それは永久追放という処罰がかせられる。
死んでも故郷に戻ることは出来ない。
でも別に寂しさはない。
なぜなら聖域に戻れたとしても、誰一人いないからだ。
レイナードが聖域を去ったあの日、レイナードの手によって全ての魔導師は殺された。
家族なんていない。
俺は……一人だ。
毎日何かをきっかけにして脳裏に浮かぶのは、聖域で起こった凄惨な光景。
「うぁ!」
いつの間に眠ってしまったのだろうか?
体中にびっしょりと汗をかき目を覚ます。
スクリーンモニターは電源が落ち、真っ黒の状態で、観客席の照明も落ちていた。
「目を覚ましたか」
見下ろすように楓の顔を見ていたのは美琴だった。
楓が見上げる体勢になっていたのは、美琴の太股を枕にして仰向けの状態になっていたからなのだろう。
そもそも何故に太股枕?
「俺は一体?」
「演習が終わって引き上げがてらに見回りをしていたら、ここで青い顔をして倒れるように眠っていたお前を見つけてな」
「それで太股枕?」
「うむ。あまりに寝顔が……じゃなく無理に起こすのが不敏に思えてな」
そう言う美琴の顔が何故か赤い。
耳まで真っ赤だ。
「いや、できれば起こして欲しかったんですけど。恥ずかしいし」
「な、な、私だって! は、恥ずかしいの堪えてだな、べ、別にお前が望むならだな……これからも……」
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