第一話『バニシングクリムゾン』

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「めでたい奴だ。お前に心を開いたことなどミジンコほどにも無いがな」 「がはは。そう照れるな。この世界は友情・努力・勝利という大原則で出来ている! お前の心だけじゃなく女の股も開く時は近い!」  どこかの小説の主人公の言葉を借りるならば《真性の阿保》が適当だろ。  俺はこいつの変態精神から出る言葉や行動を総称して《オウガイズム》と呼んでいる。  そしてそれに賛同する阿保や変態達を《オウガスト(変態達の八月)》と呼ぶ。  良かったな。お前は平凡な高校生から学園のエロや変態や阿保達の教祖的存在にランクアップしたんだぜ。  お前みたいな変態に股を開く女が現れればいいな。  その時は喜んで警察呼んでやる。 「妄想するなら離れてあるけ。キモチ悪い」 「も、妄想! 失礼な奴だな。二次専ではあるがちゃんと節度を持ってるぞ!」  世界を構築する大原則を友情・努力・勝利と、有名週刊誌のモットーをパクって公言する阿保の思考内容が妄想以外に何がある。 「節度ある人間が公衆の面前で《女の股を開く》なんて言わない」  そう言うって俺は前日の悪夢を思い出す。  昨日、生徒会長に脱ぎ捨てたパンツを顔面に投げつけられた瞬間を激写されていたのだ。  霧島家の執事に。  その写真を盾に、協力するよう脅迫されたわけだが。  俺は違う意味で女の股を開いたという点で、コイツと同類なのではないかと頭を悩ませる。 「しかし、うちの学園は美人が多いよな」  国道沿いを通り学園に近づくにつれ同じ制服を着ている生徒達が増えている。  そんな生徒達、特に女子生徒ばかりに視線を向けている横臥の言葉。  横臥の言うように、風見ヶ丘学園には女子、特に美人が多い。  理由は知らん。興味ない。  世界には魔法の基礎である魔導研究機関がいくつも存在し、魔導の力を使い活躍する魔導師達がいる。  そんな魔導師達を育成しようとしているのが風見ヶ丘学園である。  風見ヶ丘学園には現在千名以上の生徒が在籍しており、それぞれ一般教養科や魔導学科、機動工学学科など様々な学科が存在し、中でも女子の大半は魔導学科に在籍している。  風見ヶ丘学園以外にも魔導学科を設けている教育機関は多いが、しっかりとした教育設備が整っていて、優れた講師達が多くいるのは風見ヶ丘学園を置いて他には無い。
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