プロローグ~目白警察~

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皆はどう思ってるかわからないが 私は匡ちゃんに負い目を感じていた部分もあった… 結婚して当時の主人の都合で東京に住み始めた頃は私の文京区の住まいにも何度か遊びに来た事があった 匡ちゃんは店の従業員だった中国人に【結核】を移され… 都下にある【隔離病院】に入院 約一年 入院していただろうか…その頃から疎遠になってしまった… 見舞いも一度だけ… 感染予防のマスクをしての面会… 感染するのが怖かった… それから また一年後 【結核が再発】 入院保証人の依頼の電話が最期の会話だった… その頃は私も離婚し 銀座の料亭に勤務し始めていた お互い元気にやっているだろう……。 隣の区に住んでいながら私の方が避けていたかも… 目白警察で見せられた 【一枚目の写真】 布団からずり落ち 空を掴むように伸ばした両手 何か掴むように曲がった指… 死因は結局不明… 状態が悪すぎて特定出来なかった でも部屋に転がっていた風邪薬のビン・薬… きっと風邪が悪化して苦しかったのかもしれない… 今 こうして【葬祭業】に就いてみてわかる… 【死後硬直】であのようになることは稀であるから 布団からずり落ちているのはやはり死の間際に苦しんだのだろうと 隣の区に住んでいながら 私は冷たかったかもしれない 匡ちゃんが 『もう気にしないでいいよ』 と言われるまで続けるだろうと思う 好きでやっている職種だけど… 半分は…『贖罪』を感じて
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