四章

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冲「やれやれ。攘夷って言葉も君たちに使われるんじゃ可哀想だよ」 関わるまいとする人の波に逆らって、一人、沖田さんは男たちの前に立つ。 その出で立ちを見て、 浪士たちが一斉に顔を強張らせた。 浪「浅葱色の羽織……新選組か!?」 冲「知っているなら話は早いよね。……どうする?」 唇に三日月を刻むと、 沖田さんがゆっくりと刀の柄に手を伸ばす。 ……こういう時の沖田さんは、笑顔だからこそ逆に恐ろしい。 冷や水を浴びせられたような顔をしながらも、浪士の一人が悔しげな声で悪態を吐く。 浪「くそっ、幕府の犬が……!」 藤「…………。いいからとっとと失せろって」 同じ浅葱の隊服を着込んだ藤堂さんが歩み出ると、さすがに不利を悟らざるを得なかった。 浪士たちは今度こそ色を失い、尻尾を巻いて足早に逃げていく。 咲「あの……。私、咲と申します。助けていただいてありがとうございました」 先ほどの女の子が、沖田さんにぺこりと頭を下げた。 所作ひとつ取っても洗練されていて、いかにも女の子らしい仕草だった。 咲「もっときちんとお礼をしたいのですけれど、今は所用がありまして。……ご無礼ご容赦下さいね」 彼女は沖田さんへ一礼して着物の裾を翻す。 咲「このご恩はまたいずれ……新選組の沖田総司さん」 どこか不思議な雰囲気の少女の背が雑踏に紛れて見えなくなる。 藤「おいおい、ありゃ総司に気でもあるんじゃね―の?」 冲「今のがそう見えるんじゃ、平助君は一生、左之さんとかに勝てないよね」 藤「ど、どういう意味だよ!?」 杉「咲さん…か」 藤「杉川―!そろそろ帰ろうぜ―」 杉「あぁ」 俺は、屯所に戻る二人の背を慌てて追いかける。
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