一章

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杉「ここが、京の都……」 我知らず唇から、ほう、と感嘆の息が洩れた。 京に暮らす人々は誰も彼も、優しげな笑顔を浮かべている。 交わされる柔らかな言葉たちさえ、この都にはしっくりと似合っているような気がした。 でも……。 京の市中に漂っている空気は、不思議と冷えているように思える。 田舎者を排除しようとする高い壁が、密やかに存在しているかのようで……。 ―――――――――――――― 俺は暗い路地裏を歩いていた。 杉「………疲れた―………でも速く宿を探さないと」 ザッザッ ?「ひゃははははは!!」 杉「何だこの声?」 俺は不思議に思ったので、声のする方に走った。 タッタッタッ 曲がり角を曲がると…… 杉「………羅刹!!」 羅刹が三体いた。 俺の声が聞こえたのか、羅刹たちが振り返る。 チャキ 俺は愛刀蒼華を抜いた。 杉「行くよ」 ブシュッ 杉「まずは1体」 一体を袈裟斬りにした。 シュッ その時、羅刹たちは鋭い月光に両断された。 ?「あ―あ、残念だな……」 言葉の持つ意味とは裏腹に、その声はおかしげに弾んでいた。 ?「僕ひとりで始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君、こんなときに限って仕事が速いよね」
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