届かぬ声

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浅葱が言ったその時、ちこが戻って来た。 その小さな手に小包(こづつ)を抱いている。 「ちこ……」 浅の呼び掛けに首を傾げるちこに、飛鳥が近寄り、しゃがんで目線を合わせる。 「ねぇちこちゃん。ちこちゃんに鬼のことを教えたのは、おじいさんですか?」 優しく微笑みながら問う飛鳥に、ちこは一つ頷いた。 「変な笑い声をした?」 また一つ、頷く。 「……隊長」 「ああ、決まりだな。後でもう一度集落に戻ってみるか……」 四人は頷くと、再びちこに向き直った。 「それで、ちこちゃんのお願いは?」 紅葉が覗き込むと、ちこは小包を差し出した。 「? 開けて良いの?」 ちこが頷くのを確認し、紅葉はそっと小包の蓋を開く。
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