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「つまりおじいさんを探して、その小包を渡してあげればいいんだね!」
「今回は舌切り雀ってことか」
紅葉と大和が順に言うと、飛鳥が静かに立ち上がった。
「そうと決まれば、早速行きましょう。多分、急いだ方がいいですよ」
いつもの笑顔を消し、ちこの足元を見る。
皆が注目するとそこには淡い光を発し、消えかかっているちこの足。
「……!?」
驚いて数歩後退るちこだが、光は消えはしない。
「どういうことだ……!?」
「こうは考えられませんか?ちこちゃんはもう邪魔で、昔話に消されかかっている、と」
「昔話に……?」
怪訝な顔をする大和。
その一方で「そういうことか」と納得する浅葱。
「え?え?どういうこと?」
「つまりだ」
首を傾げる紅葉に、浅葱が向き直る。
「鬼は倒したが、『舌切り雀』という物語は完結していない。おじいさんをもてなし、小包を渡す。そこまでが一区切りだ。今はまだそこに至っていない。つまり今のままじゃ完結できない。それに、ちこがこれからも彷徨いていたら、またどんなことが起きるかわからない。それこそ新しい鬼とかな。だから物語自体がここにいるちこの存在を消そうとしてるんだよ」
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