届かぬ声

53/58

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
角を曲がった所で、ちこが前方に見えた家を指差した。 「あれなんだな!?」 ちこは力強く頷き、大和の腕から降りる。 紅葉から小包を受け取り、ちこは家の前に立った。 浅葱がちこの隣に立ち、戸を叩いた。 「はいはい、どちらさんで?」 出てきたのは、少しきつめの顔をした老婆だった。 おそらく、ちこの舌を切った張本人であろう。 ちこは怖がるように数歩後退っている。 「すまない、おじいさんはいるか?」 「なんだい、あんたたち。そんな変な格好をして。それに汗だくじゃないかい」 「至急なんだ!頼む!」 浅葱たちの異様さに顔をしかめた老婆だが、剣幕に負け、しぶしぶ家に入って行った。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加