届かぬ声

56/58
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
「さぁて、俺達はそろそろ行くか」 「そうですねぇ」 浅葱と飛鳥が言い出すと、ちこが僅かに悲しい顔をして見せた。 「お別れです、ちこちゃん」 覗きこんで頭を撫でると飛鳥は踵を返した。 「じゃあね、ちこちゃん!元気でね!」 紅葉も手を降り、ゆっくり立ち上がる。 「おじいさん、ちこをよろしくな」 大和も微笑み、ちこの頭を一撫ですると、踵を返した。 「じゃあな、ちこ」 浅葱は僅かに微笑むと、村の外へと歩き出す。 すぐに、後ろにどん、と小さな衝撃が走った。 浅葱の身長の半分程しかないちこが、背中にぶつかったのだ。 そしてはっきりと口を開いた。 『ありがとう』 浅葱は再度微笑むと、ちこの頭を撫で、再び歩き出した。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!