綺麗なバラには刺がある

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「さあさあ、遠慮せずにどうぞ」 「…………はぁ」 にっこりと微笑む乙姫に、浅葱は生返事を返した。 竜宮城は、日本の地上にある城がそのまま海に建設されたような外観をしており、招待された浅葱たち一行は、客間に通され、豪華な料理を振る舞われている最中である。 隣で料理を綺麗に、且つ素早く胃袋に納めていく飛鳥を横目に、浅葱は口を開いた。 「なぁ、乙姫さん。悪いけど俺たちは客人じゃないんだ」 「知っています」 「は?」 間髪置かずに返された言葉に、浅葱は首を傾げる。 「ですが、これから協力を扇ぐ方々に、何もしないというのも失礼でしょう?」 「協力? 待て、一体何の話を……」 「ご安心ください。事が終わった暁には、改めておもてなし致します」 浅葱の言葉を遮り、乙姫は人の良い笑顔を浮かべた。
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