綺麗なバラには刺がある

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「撤退だーー!」 その声を聞くと、今まで襲って来ていた魚類はピタリと止まり、踵を返してもと来た方向へと戻り始めた。 「紅葉を攫う気か!」 二人が追いかけようとするも魚の速度には敵わず、煙幕代わりのタコやイカの墨で視界が遮られる。 「くそっ……!」 「さすがにこれは無理ですねぇ……」 「……とにかく、隊長に報告しよう」 墨が晴れるのを待ち、遠くなる敵の後ろ姿を見た二人は追うのをやめ、浅葱の元へと戻った。 「隊長!紅葉が攫われた!」 「はあ!?」 「そんな……!」 撤退する敵を神妙な面持ちで眺めていた浅葱と乙姫は、二人の報告に驚愕した。 「でっかい鮫にパクンと一口。生きてるんですかねぇ……」 「縁起でもねぇこと言うな!」
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