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「約100年前から玉手箱は代々受け継がれ、守られてきました。私もその一人です。ですがある日、事件が起きました」
乙姫は一旦言葉を区切ると、目を閉じた。
「浜辺でいじめられていた所を助けられたと、亀が客人を連れてきたのです。名を浦島太郎といい、とても良くできた好青年でした」
目を細めて微笑む乙姫。
「私達は大切な仲間を助けてもらったと、盛大にもてなしました。そして、浦島様が地上に帰る時、私は沢山のお土産を用意したのです。竜宮城ならではの食材や、宝石などを、沢山」
「その中に玉手箱が紛れこんでたとか?」
「いいえ、違います」
大和の質問に、乙姫はゆっくりと首を振った。
「私には、たった一人の妹がおりました。妹は、何を思ったのか私に隠れて玉手箱を浦島様に渡し、不老不死になれる宝だと嘯いたのです」
「なかなか怖い妹さんですねぇ」
「……私はそのまま気付かずに浦島様を見送りました。そして、地上に帰った浦島様が老人になってしまわれたことを亀から知らされたのです……」
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