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「ばあさんも、それを望んでおる」
「おじいさん……」
「……戻って、来てくれるか……?」
ゆっくりと、確かめるように尋ねる老人。
雪奈は顔を上げ、綺麗に微笑んだ。
「はい……!」
「ありがとう、雪奈さん……」
「あ……でも、少しだけ待ってもらえますか?」
雪奈の手をとり、村へ向かって歩き出す老人を、雪奈は引き留めた。
そして、自分の後方にある焼け跡を振り返ると、深く頭を下げる。
「晴樹さん、紅葉ちゃん、飛鳥さん、大和さん……」
風が吹き、雪奈の髪を揺らす。
「ありがとう、ございました。……またいつか、お団子食べましょう!」
雪奈と四人の小さな約束は、風が静かに拐って行った。
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