狂い始め

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炎零の話を簡単にまとめると、 神は存在するらしい。 その神は村を消し、ガルを煽った。 自分の元へ復讐に来るように。 ただ、人間観察がしたくて。 ようするにオモチャに選ばれたと言いたいのだ。 「そんなの信じるわけないだろ……」 ガルは警戒気味に静かに主張した。 その顔には汗がつたう。 神なんて居るはずがない、というのがガルの心だからだ。 それを聞いて炎零は笑った。 「なら、この村が消えたことを否定する、ということだぞ」 放たれた炎零の言葉にガルは言葉がつまった。 「俺は行く。お前も来るか?」 炎零が何となしに確かめる。 初対面の男からのいきなりの誘いに当然ガルは戸惑った。 だがこのままここに居ても何もない。ただ灰にまみれるだけだ。目に見えている。 そしてそれ以上に誰がみんなの仇をとるんだ?という考えが頭を占領し始めた。 気づくとガルは答えていた。もしこの男が嘘をついていても死ぬ。 なら、 「ついてく。……けど、信じたわけじゃないからな」 「別に信じる信じないは勝手だ……名前は?」 炎零が聞くとガルは一瞬戸惑った。 だがすぐに口を開いた。 「……ガル、コーネット」 それだけ聞いて歩きだした炎零を見てガルは慌てて後をおう。 旅の始まりが手ぶらというのは奇妙だが。 これからどこに向かうかガルが聞こうとしたとき、炎零は立ち止まり、顔をしかめた。 突然頭に激痛が走った。 頭の中に突然無邪気な声が囁きかけてきて炎零は戸惑った。 ガルには聞こえていない。 ―何のために? 心臓が掴まれたように冷たい。 ドクッ それに合わせて心臓が鳴る。 まるで何かのカウントダウンのように。 ドクッ ―なんのために? ドクッ ―たすける? ドクッ ―誰を? ドクッ ドクッ ―誰を? ドクン
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