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突然炎零が止まったのでガルは足を並べる前に炎零の背中にぶつかった。
謝ろうとしたが炎零はそれにすら気づいていないらしい。
「炎零?」
汗まみれの炎零の名を呼ぶが頭を押さえて動かない。
できるだけ平静を装うとしているが額には脂汗が次々と浮かんでくる。
「まずい…コーネット(ガルの名字)、離れ…!!」
急に名前を呼ばれてガルは驚いた。
「おい!大丈夫か?何が……」
何がなんだかわからずにガルはあわてふためく。
「消える……クソ、ったれ……」
苦しそうに炎零は言うがガルは意味が分からなさすぎてただただ見守るしかできない。
だんだんと炎零の頭に炎零の昔の記憶が流れ始める。
――……死にたくない。
――そう彼女は笑った。
―彼女?
また冷たい声が被さった。
――彼女は戦った。
―何故?
--炎零!
少し前まで見ていた大好きな笑顔が、広がる。
炎零の頭痛は何事もなかったように治まった。
ガルは未だにどうしていいかわからず炎零を見つめている。
落ち着いている炎零に少し安心を覚えてさっきの慌てぶりはない。
炎零は静かに息を整えながら答えた。
「……消された」
突然の発言に一瞬反応に困った。
「は?」
すると帰ってきた答えは
「神の居場所の記憶を奪われた」
それは炎零が神がどこに居るのか忘れたということ。
「はあっ!?」
今度こそ意味を理解したガルは呆然と立ち尽くした。
つまり、行くあてもなくどうすることもできないということだ。
……なんと不揃いな旅だろうか。
こうして物語は駆け出し始めた。
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