街街行こう。

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受付時間が終わるまではまだ時間がある。 これを期に三人は噴水の近くで休憩ついでにお互いのことを話していた。 「じゃあガルは村を…その、消されちゃったの?」 リラが噴水のそばの木製ベンチに座り込みながら聞いた。 ガルと炎零は傍に立ちながらそれに答える。 お互いの話をしようとなったがやはり聞かれると辛いものがある。 まだ三日も経っていないのに忘れるはずがない。 あの時の光景が目に浮かぶ。 炎に包まれ、灰と化す愛する故郷。 「あぁ。リラは?」 少し辛そうに肯定したガルはリラに話を振った。 「私?私はね、 記憶がないの。記憶、消されちゃった」 作り笑顔で笑うリラ。 ガルと同じように辛そうにしている。 「え…」 思わず声を出してしまった。 「だからね、リラ・キースルって名前もホントかわからない。銃にそう彫ってあったからそうかなって」 そう言って腰のベルトから取り出した小型のハンドガンには小さく LIRA・KEASLE と彫られてあった。 そんな答えが返ってくるとは思わなかったのでガルが謝ろうとするとそれを察したのかリラは話題を変えた。 「炎零さんって確か、堕鬼なんだよね…人間と何が違うの?」 表情は読みにくいが炎零は迷いなく静かに答えた。 「基本的な違いは治癒能力と身体能力だ。人間とは比べ物にならん」 それを聞いてガルは炎零が巨大猪を持ち上げたことを思い出した。 「じゃあさ、前言ってたスキルは?」 その猪を仕止めたとき、炎零が自分のスキルは炎だと言っていたことを思い出す。 「堕鬼には一人一人違う自然能力を使いこなせる。それが俺の場合炎なんだ」 相変わらず淡々と答える。 「へー」初めて聞くことばかりなので2人は関心のため息しか出てこない。 『出場選手は集合してくださーい。』 主催者の男が呼びかけたので会話はストップ。 ガルとリラは慌てて集合場所に向かおうとする。 だがすぐにリラが炎零に振り返った。 「じゃ、待っててね」 「そこ居ろよ。後で帰って来るから」 ぶっきらぼうに言うガルを見てふと炎零は思い出す。 街に入って出会う親子にガルが寂しげな視線を当てていたことを。 やはり無理をしているのかと炎零は思った。 「……人間にあそこまで懐かれるとはな」 炎零が呟く。 頭に手をやり髪をクシャッとし、また呟いた。 「お前のせいだぞ。リバティ」 切なさそうに、愛しそうに。image=379280019.jpg
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