狂い始め

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……予想通り見つけやすかった。 茶色い土の上に先程の黒い点が黒い塊として横たわっていた。 嫌な風が吹く。 どこから落ちてきたのかはわからないがあの高さだと生きてはいないだろう。 相当な高さだった。 原形をとどめてすらないかもしれない。というより本当に人間なのか? ガルは唾を飲み込んだ。 色々な疑問を頭に巡らせ息を切らしながらもゆっくりと近寄った。 驚いた。 予想とは違いガルの目の前で倒れている血まみれの人物はモゾモゾと動き必死で起き上がろうとしている。 …生きているのだ。 髪の色は赤色なのかと思ったが出血が酷すぎてわかりにくい。 落ちたのになぜか切り傷まみれの痛々しい体。 細かい土が吹き出る血にへばりついてより痛々しい。 そんな怪我にも関わらず男は必死に手をついて四つん這いになりながら立とうとする。 生まれたての小鹿まではいかないが力が手足に入らず震えている。 すると何か見えてでもいるようにするどい眼で顔を上げた。 「クソ……りば…てぃ…」 男が何かを呟いたとき、ようやくガルは我に返った。 「おっ…おい!大丈夫か…って大丈夫じゃないよな…」 その言葉に男はやっとガルの存在に気づきゆっくりと顔を向けた。 綺麗な深緑の瞳だった。
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