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「お前は……誰だ」
驚き混じりの瞳がしっかりとガルをとらえている。
「えっ俺?俺はガ」
普通は怯むところだがガルは答えた。案外鈍いらしい。
答えようとしたが
「伏せろ!!」
男の一言でそれは遮られた。
一瞬意味がわからなかったのか唖然としたガル。
………何が起こったかはわからない。
ただ男がそう叫んだ瞬間、
ガルの鼓膜には轟音、蒼い綺麗な瞳には熱気、むせび返すような煙の匂い。
それがガルの後方での出来事だと気づいたのはいつだったのか。いや、いつからそうなったのかもわからない。
ただ愕然とした光景に目が奪われる。
足が震えた。
「チッ…」
男は舌打ちしてからゆっくりと目をつぶる。まるで手遅れだともいうようにその動作でガルの希望を断ち切った。
だがガルはそんなこと今はわからない。
「なん…だよ、これ…」
鮮やかな炎に包まれ
ガルの愛した村は焼け落ちた。
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