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そんなガルを見て男はため息をついた。
少し言い過ぎたという反省の意も含みながら。
「お前は今、必然的にここにいる。それだけだろう」
ガルはカタカタと震える手で顔をぬぐう。
そして雲一つ無い憎たらしい青空を見つめた。
その広さにまた涙が溢れそうになる。
夢だと思いたい。
だが確かに、痛い。
心がキシキシと軋んでいるのだ。
「おい小僧」
重たい空気の中、男は先程よりも落ち着いた口調で語りかけた。
「俺の名前は炎零<エンレイ>だ。単刀直入に言う。小僧、お前の村を消したのは」
ガルは静かに耳を傾ける。それに対して炎零はゆっくりと言った。
「神だ」
ガルは唖然としている。
というよりか信じれていない。
この世界で神は圧倒的上の存在。
そして、空想。
宗教によっては消息不明で世界の理の異端者。
他では居るかどうかすら信じられていない。
それがガルの村を燃やした。そうこの男は言いたいのだ。
「何言って…」
だが目の前であり得ない光景を見せつけられたのだ。そう思いガルは言葉を詰まらせる。
「そして俺は、神に仕える種族、墮鬼だ」
ガルは卒倒しそうだった。墮鬼と言えばその神に仕える最高異種族と言われている。数知れない能力に人々は密かに怯えている。
神の言いつけなら殺人でもなんでもするのだ。
「いやいやいや無いだろ。流石に……」
それでもガルは説明の度に否定しようとするが幾度となく炎零に遮られる。
「俺はここに落とされた。そしてお前に出会った。
仕組まれたんだ。この村を燃やした神の暇潰しにお前は選ばれた」
――暇潰し。
ガルの中に小さな小さな感情が芽生えた。
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