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 主任殿は私の様子を見て、気をつかったのかそう言ってくださいました。その言葉に素直に甘んじておけばいいものを私は生来の――これは素直さなどという高尚なものではございません。名乗り癖と言いましょう。その自己主張の強さのために、 「関根佳志義といいます。佳作のカにココロザシ、義理の義でヨシキと申します」  咄嗟に答えてしまったのです。(ああ、しまった)と気付いたのはすっかり名乗った後でした。ここは何か偽名のようなものでも使ってしまえば都合が良かったのです。連絡先についても適当に誤魔化せばよいものをと気付いたのは、これもはやりすっかり携帯の番号を控えさせた後になってからのことで、自分の愚鈍さを相当疎ましく思いました。
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