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 このようにして、私の様々(と言っても名前と携帯の番号のみですが)を控えられて、早いものでそろそろ一週間が経ちます。一向に連絡はございません。持ち主が現われていないのか、あるいは持ち主が現われたにもかかわらず私に連絡の意思がないのかのどちらかでしょう。後者ならば大変救われます。けれど、それはどれほど思考しようと回答のない問いなのですから、今後何もないこと祈りながら待つほかございません。  冷静に考えれば、このような経緯で窃盗やら置き引きやらで訴えられる心配はないのでしょうが、しかし、どうでしょう。  ひとつでも自身に後ろめたいものがございますと、こうも臆病になるものかと今もびくびくと一日を過ごしています。今に携帯に知らない着信が現われて、何かお叱りを受けるのではないかと気が気ではございません。こうして文章をしたため皆々様に告白せねばどうにも心の潰れそうな心持おわかりいただけるものでしょうか。世間への露呈をを恐れながら、こうして文章にして発す心持ご理解いただけないものでしょうか。好奇心と臆病とが上手い具合に混ざり合った極上の心地なのでございます。私は一種の奴隷です。何に対してかは分かりませんが、どうしたって今回の心持を思えば、「積極的な奴隷精神への適応」としか思えぬのでございます。  今回のようなことに相成りまして、考えなしの悪行ほど恐ろしい物は無く、悪行を実践するならば、徹頭徹尾隙を排斥せねばならないと学びました。それと同じに、私には悪事は撤退的に向かないということも学びました。  こう長々と駄文を連ねお目汚しとなっていないことを祈るばかりでございますが、最後に一言ばかり添えまして、それを以って締めの句とさせていただきます。  悪事身に着けるのに徹底に撤退を重ねられないならそんなことァするものでないよォ君。
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