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 告白をします。熱の冷めないうちにこれを文にせねば、果たした意味が無い。  ことの発端は新宿駅にて小田急線を待っていたことからです。ああ、説明せねばなりませんね。私は関根佳志義という名の大学生でございまして、毎日々々東京の大学に通っているのです。 名前はヨシキと読みます。書くには易く、読むには難い字なものですから小さい頃より「佳作のカにココロザシ、義理の義でヨシキと申します」と何度と無く教師やら講師やらを相手に自分の名前を口にしてきました。どうしてここでこのような話をしたかといえば物語のお終いに、僅かばかり、しかし重要にそのことが関わっているからなのです。  さて、私は学校も終わり、新宿駅から出る汽車を待っていたのです。急行小田原行を待っています。相模大野行や藤沢行などの汽車もいくつか参りますが、乗換えをするのは七面倒なのでいくつかの汽車を本を読みながら見送り二十数分後に参るであろう望みの汽車を待っていました。  本の内容に夢中になってしまえば時間は存外早く過ぎるもので、私は肩からかけている鞄を時には左、時には右へと背負い直し背負い直し待っていました。しばらくして汽車が参ります。私は決まって三両目の端っこの乗り口から乗車します。というのも、ここから乗車しますと目的地である鶴巻温泉では降りてすぐのところに改札が参りますのでここより乗るのがとても楽なのです。
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