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汽車は終着してから先に降車する客を片すため、乗車するのとは逆側のドアーを先に開放し、車内を空にします。
車内の様子を眺めていますと一人眠ったままの男がありました。その男は連絡扉の近くの席、つまりはよく優先席に指定されるような横並びの座席の乗降口寄りのところに座っていました。男はスゥツを着ており、膝の上には黒い化学繊維らしい素材の鞄、すぐ上の網棚には赤いブリーフィングケースがありました。
ふと男は目を覚ましたようで、辺りをキョロキョロと見回します。すると再び眠ってしまいました。どうやら乗り過ごしたのでしょう。そのまま折り返すのを待つ腹積もりだったようです。
がぁっ、とドアーが開き、ようやく私は乗車叶いました。座席は乗り口のすぐ左。一番端の席に座ることかなったのです。先の男の斜め向かいの席でした。私はすぐにイアフォーンをし曲を聞き流し、読書を再開しました。
これから、代々木上原、下北沢、成城学園前、登戸、向ヶ丘遊園、町田、相模大野、海老名、本厚木、愛甲石田、伊勢原、鶴巻温泉と巡って目的の駅に参るわけです。
読書を開始してしばらく。早いものです。代々木上原を過ぎた辺りで目蓋が重くなり、うつらうつら始めてしまいました。ふと気になって斜め向かいを見ようとしました。しかし、帰宅ラッシュとでも言いましょうか。人ごみのために向こうの様子は知れませんでした。私はそのまま眠ってしまいました。
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