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(待て! 待て! そんなことをしては間違いなく犯罪である)
すぐに考えを改め、中身を改めたらすぐに駅員に届けるのだと、再度自身に確認しました。私は財布が入っていないことを祈りました。祈ったのです。財布が入っていたとして、堪え切れるか不安だったのです。祈る他はありませんでした。
やがて愛甲石田に到着いたします。人がまた僅かに乗降しました。ブリーフィングケースを眺めながら気付いたのですが、斜め向かいの網棚のあれをおもむろに取って(盗って)行っては、回りは不審の目で私を見るでしょう。私は乗降客に混ざって、こっそりその網棚の脇に移動しました。網棚のすぐ前には中年の男性がいましたのでどうしてもそこにいざるをえませんでした。
ところでこの中年は本厚木辺りからいたようで、ブリーフィングケースの横に自分のリュックサックを置いていました。これはまずい。少なくとも彼には私は不審に映ってしまう。自分よりあとから現われた男が、自分の乗車より先にあったケースを持ち去っては怪しいことこの上ないでしょう。駅員にせんじて連絡、あるいは通報されかねません。そのことをよく吟味すれば、今回のことは随分と私に旨味の無い話です。
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