Prologue

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 機内は叫び声や泣き声で充満していた。  キャビンアテンダントの人も顔を手で覆っている。  四方六方「助けてくれ」や「嫌だ」という声しか聞こえてこない。  まるでここは地獄のようだ。  機体はついにバランスを崩し、スピードを上げて頭から下に落ちていく。  もう助からないだろう。  一人の中年の男は隣に座る奥さんであろう女性の手を握った。  女性は涙を流していた。  男はこんな状況の中、奥さんのためだろう…  微笑んで何か言葉をかけた。  女性はハッと顔をあげ、「そうね」と呟いた。  みるみるうちに飛行機は落ちていき、とうとう目の前には真っ青な海が広がった。  狂気の声が上がる中、その二人の夫婦はこう呟いた。 【ありがとう】と…
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