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坂下「住職のわたしは、妻と二人暮らしです。ある日、近くの川に、誰が持ってきたのでもなく、岩がひとつ現れた。わたしはそれを見てひどく恐怖しました。」
坂下「というのも、坂下の先祖はもとは新潟の蒲原郡(かばわらぐん)の出身。その村の寺で先祖は営みを続けていたが、ある怪奇があったといいます。寺の住職の死期が迫ると、川辺に墓石がひとつ出現するというのです。そうすると……」
崇慶「一、二年のうちに住職は死ぬ」
坂下「な、なぜご存じで!?」
崇慶「津村綜庵(つむらそうあん)の『譚海(たんかい)』巻之十。住職の死期に備えて川辺に墓石が出現する話。地域も越後(えちご)の蒲原とあらします」
坂下「さ、さすが恐れ入る……」
崇慶「坂下和尚には負けますわ。御坊(ごぼう)は禅定(ぜんじょう)六波羅蜜(ろくはらみつ)、釈迦が教えの心を静めて悟りを得る妙光寺でありましょう」
坂下「は、は……きつうおなぶりになりますな……さてこちらの地に移り住んできて三代経つが、住職だった父親も祖父も、その言い伝え通り死んでしまいました。なら今回は自分の番、と思うのは当然でしょうが」
崇慶「さようでこの化丹波にご依頼と」
宗慶「ま、誰でも長生きはしたいモンやしな」
薫子「壷……あるよ……」
一郎「え? か、薫子ちゃん寝相悪いよ! 壷割れる!」
坂下「う、うるさい若造どもだ。……やはり私も助からないのでしょうか」
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