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「じゃ、私はレストランに行ってくるから、ご飯は勝手に食べてね、虫」
虫?俺虫なの……?ああ、あんまりだ。
それに自分だけレストランとか……
「ほら、行ってらっしゃいが聞こえない
わよ」
「行ってらっしゃいませ、早苗様」
アッパーをモロに受けて撃沈している俺を心配することもなく、早苗様はずかずかと去っていった。
本当はずかずかなんて歩いていない。いかにもお嬢様らしく、上品に足を進めている。
ただ、奴の中身は怪獣みたいなもんだから、こんな風に表現させていただいた。
ゴジラとかガメラとか(最近見ないけど)は、怪獣の着ぐるみの中に人間が入っているらしいが、奴は怪獣が早苗様という皮を被っているにちがいない。
そうでも思わなきゃやってられない。
……にしても、いきなり同棲することを決められたと思ったらこの性格。
あんまりだとは思わんかね?
ケータイとにらめっこしている諸君。
本当にお先真っ暗だ。
ここまで絶望に打ちひしがれるのは生まれて初めてかもしれん。
よっこいしょ、と重い体を起こし、
もう暗くなった空を窓ガラス越しに見た。15階なだけあって、灯りをともした家や、デパートなどが作り出す夜景が美しい。
……のに、テンションが上がらない。
「……どうしてこうなった」
今日の教訓。
どんなに理不尽でも、我慢しなければ
いけないこともあるのです。
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