目標の名前は片倉清志

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教師などというものは全くもってまともな職業ではない。 接客業に事務職、神職とその他諸々のジャンルの職業をごちゃ混ぜにして練り上げたような激務である。 こんなはずじゃなかった。教師など誰にでも楽に勤まるだろう。そう考えてあっさり目の前にぶら下げられたエサに食い付いてしまった自分を毎日のように悔いた。 頭髪は日に日にその繁栄を薄めていき、元々コミュニケーション力がなくて面接を落とされていた私に仲の良い同僚などできるはずもなく、授業と事務連絡以外に喋ることと言えば悪態とも愚痴ともつかない独り言をボソボソと呟くだけ。 私の授業も生徒たちはまるで聞くつもりもないのであろう、喧騒に包まれた教室の黒板に淡々と授業を聞かせ続け、チャイムが鳴ると同時にそそくさと片付けて退室する。ただそれだけの繰り返しだった。
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