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新しく住み始めた家には両親がいない。苦しい家庭をさらに追い詰めたのが俺達である。何か大事な用が無い限りは、家から一歩も出られない。まるで籠のに閉じこめられた鳥のようだ。会話のない家族。本来なら血の繋がりがある父の兄だって、その子供もいとこと呼べるのに、コミュニケーションが全くなかった。
『いい加減にしろ!!俺をなんだと思っている!!』
『わたしは、あんな子供達なんかいらないわ!』
ガシャーン。
何かが割れるような音がした。そんなに家具を壊していいのかよ、と俺は心の中て舌を出す。
「雷稀、もう寝た?」
「寝れないよ。僕さ、不眠症になったらどうしよう」
「ならないな。というかお前はなれないよ」
時計を見ると時刻は夜中の一時を指していた。本来なら今日は、学校に行く日にあたる。俺は中学校最後の夏休みをもう少しで迎え、雷稀は小学校三年生最初のプール開きがある時期だ。本当なら今頃、俺はクラスメートと一緒に祭りに参加したり海に行っていたはずなのに、両手の自殺という不幸な出来事のおかげで行事おろか学校にも通えなくなってしまった。
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