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部活だってまだ続けまかった。父さんから譲り受けたこの高い身長で、ボールを片手にゴールまで一直線。スリーポイントで点を入れ、チームメイトと共に喜んで――。
この家庭の状況じゃ、学校に行くなんて夢のまた夢の話しだろう。バスケットボールの選手になるという夢も、雷稀を中学生に上がらせることも、一生叶わない。
「俺達に、幸せがくる日なんてないんだよ…」
悔しさと悲しみに押しつぶされて、自然に口からこぼれた。ふと耳を澄ますと、おばさんん達の喧嘩が聞こえてこなくなっていた。下のリビングからは静寂しか感じられない。未だに耳を両手で塞いでいる雷稀き声をかけた。
「もう終わったみたいだぞ」
「僕達、ここにいていいのかな」
雷稀の苦しそうな顔。俺も、苦しいよ。そういおうとしたが、それより早く雷稀がベッドから起き上がり俺の腕を掴んだ。
「ねぇ、家に帰ろう!お母さん達の所に帰ろう!」
涙ぐむ雷稀から顔をそらす。うるさい、うるさい、うるさい。
「どうして、僕達あんなことを言われなきゃいけないの?」
こっちが知りたいくらいだ。雷稀の腕を振り払い、背中を向ける。それでも雷稀は俺の腕を掴もとして、シーツに足を引っ掛け顔から転んでしまった。
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