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きしきしとなるフローリングの床を歩いていると、下の階から明かりが漏れているのに気がついた。もう寝たと思っていたのに、まだ起きていたのか。
なんとなく気になったので、足音を立てないようにして階段を半分まで降りてみる。その明かりはリビングから差し込んでいて、人影が二つ見えた。どうやらそこにいるのは先ほどまで喧嘩をしていたおじいさんおばあさんみたいだった。小さな声で何やらヒソヒソと話しこんでいた。いつもと違う雰囲気だったので、更に気になる。はっきりとまでにはいかないが、大体の会話は聞き取れる。俺は耳がリビングに傾けた。
「どうすればいいのかしら。私達にはゆうちゃんの学費払うので一杯一杯なのに。ゆうちゃん、もう少しで高校生よ?部活も続けさせてやりたいわ」
ゆうちゃんと言うのはおばさん達の子供、つまりいとこの裕之介のことだ。皮肉なことに俺と同い年なんて虫酸が走る。中指を突き立て顔をしかめてやる。
「裕之介、部活は何やりたいっていってんだ?」
「将棋部よ。ゆうちゃん頭がいいもの。将来はプロの将棋士になれるわ」
さっきまで喧嘩していたのが嘘のようだ。久しぶりに、この二人がまともな会話をしているのを見た気がする。子供に無駄に期待するのもどうかとは思うが。
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