森羅学園

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着替えも終わらせて居間に戻ってみると、リコは本当に母さんと仲良く喋っていた。 「お待たせ。姫とコウは?」 「姫がついさっきフリーズしたからそのお守り」 「そっか。じゃあもう数分くらいはゆっくりできるか」 リコは母さんに挨拶してから勢いよく飛び出していった。 「ゆっくり出来るっていったのに」 「まあ元気でいいじゃない」 「元気すぎるけど。じゃあ行ってくる」 「あいよ」 見送られて玄関から出てみると、リコとは別に二人ほど、俺を待ってくれていた。 「おはよーさん」 「おはようヒーロー。今日は早いな」 「心機一転だよ。俺達もう二年だろ?」 「あんたは絶対変われないよ、ヒーロー」 淡々とそんな事を言う男。人を寄せ付けないような無愛想な表情をしているが、今は嬉しそうに話している。 この男。 芦屋宏(あしやこう)。 俺と同じ学年で、付き合いの長さはリコと並んで二位タイ。 俺は普通に名前で宏と呼んでいる。 肌の色は少しやけて黒っぽく、身長も四人の中で一番高い。顎には髭も生え、かなり男前。 で、顔に似合わず優しいのだ。 何かと人の世話を妬きたがる。本人は絶対にそれを認めないけど。 「姫は?まだ固まってるの?」 コウが指さす方向に固まった長髪の友人が固まっていた。 文字通り、固まっているのだ。直立不動で。 今回は長くなりそう、か。 「じゃあ俺が背負うよ」 力を入れて小柄な身体を背負う。 「あーずるい!」 「ずるくない。そもそもリコはいつも抱きついている」 俺の代わりにコウが代弁してくれた。 「ま、そういうことだな。それじゃあ行こうか」
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