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「夢も現実も一つに、か……なんて夢のない発想なんだろうね」
闇夜の空に、オーロラを思わせる不気味な光が揺らぐ。
現実を見据えようとする者を、夢の世界へ誘おうとするかのように、人々が目指す現への道を閉ざしていた。
そして、全てが幻想の底へ突き落とされた夢を前に、とある屋内に立ち尽くしていたセオがため息を漏らす。
「現実が嫌で嫌て仕方がないから、人は夢に縋り付くんだ。そんな夢を現実に近づけて、一体何が嬉しいんだろうね」
宿の一室であったはずの部屋は、見る影もなく興廃していた。
何か巨大な力によって破壊された扉と、砕けた窓ガラス。
乱雑に散らかされた家具にも、その場で起こっていた戦闘の痕跡が刻まれている。
そこで落ち合うはずだったレナードの姿もなく、揺れ動くのは、割れた窓から吹き込んでくる風にはためくカーテンのみ。
まるで、部屋全体が殺風景な戦場後のようだ。
そんな中、どこか他人事のように呟いて見せるセオが、部屋の隅に転がっていた一本の黒い刀を拾い上げた。
それは、セオがレナードに託し、それ以来彼が腰に携えていた黒翼刀『鐵鷲(くろわし)』。
黒い結晶のような鞘が柄にまで及び、手にしたセオにさえ、その刃を見せることを拒んでいた。
「コマンダーの魂残して、使い手失踪か。いいレア物が台なしだよ」
所有者を選ぶ名刀が、無造作に投げ出された現状を前に、セオはため息をつきながらも腰に携えていた『クリフェトンの書』を手に取る。
そして、めくられたページより漏れ出た光の中に、『鐵鷲』を収めようとした。
……しかし、
「相変わらず、仲間よりもレア物か? いい気なもんだな」
「ん?」
一瞬、背後より身を貫くような殺気がセオの手を止めた。
それ以上に、放たれた殺気に込められた口調に、聞き慣れた何かを感じたセオがゆっくりと背後に視線を向ける。
しかし、それはあまりにも遅すぎた。
「……ウエストエンブレム」
「っ?! ちょっ――」
セオの視界に飛び込んできた最初の恐怖。
それは、彼に向けて真っ直ぐ接近してくる横薙ぎの斬撃だった。
熱を帯び、焔を現出させるその一旋は、セオにむけて真一文字の斬撃を振り放つ。
思わぬ強襲に、セオは反射的に身を伏せてかわし、剣を振るった者とすれ違うようにしてドアの向こうの廊下へ転がり出た。
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