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しかし、再び振り放たれた炎の斬撃は、セオの腰に携えられた『クリフェトンの書』より解き放たれた一筋の白銀の光によって打ち消されてしまう。
「何っ――」
「フッ、自分の夢と仲間を天秤にかけたか……いいじゃないか。久しぶりに、君の人間らしい感情を見ることができたよ」
どこか余裕さえ感じられるセオの発言に、さすがのレナードも言葉を失う。
まるで、自身の抱く夢の底を覗かれたかのような虫痒さが身のうちを支配する中、レナードは今だに自身の回りを飛ぶ白銀の光を振り払った。
主に邪魔物扱いされ、淋しげな愛犬を思わせるその光は、名残惜しむかのようにレナードの元を離れ、セオの周囲を飛来する。
そして、その光はセオの手にする『鐵鷲』を包み込み、白銀の光を素早く振り払うとともに、彼の手には純白の鋼殻に覆われた一本の刀が握られていた。
「チッ、神殻刀アイカスティオン……剣が被る死に装束にはお似合いか」
「さぁ、どうだろう。俺としては死に装束だろうと祝いの袢纏だろうと関係ない。それがレア物ならね」
片手でアイカスティオンを弄ぶセオ。
慣れない様子さえ感じられながらも、型にはまらないセオの手つきは、戦闘の知識が少ないコレクターゆえのスタイルと言える。
そんな彼を見据えていたレナードが、吐き捨てるように『焔羅』を両手で構えてみせた。
「フン、レア物か……なら、そのレア物に殺されるのも願ったり叶ったりだろうなっ!!」
二人の視線が交錯した一瞬、周囲に異様な静寂が流れる。
どこか張り詰めた空気が互いの肌を刺す中、レナードが素早くセオへと間合いを詰め、その斬撃を上段より振り下ろした。
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