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ふぅ、お寝坊さんのアリスを起こしてあげるのも容易じゃないわ。
でも…あの子も…。
ウィディアは、洗面所に向かうアリスを見ながら思った。
此処にいる孤児達にはみんな哀しい過去がある。
親に見捨てられたり、親が事故で亡くなったりなど。
ただ、彼らは何故此処にいるかを知らない。
気付けば、此処にいた。という感じであろう。
アリスとて、例外ではない。
彼女はある有名な科学者が愛人に生ませた、いわゆる“隠し子”なのである。
ただ愛人がいるという事実の発覚を恐れて、この孤児院に無理矢理預けたのだ。
その科学者は愛人を見捨て、無理に自殺に追い込んだ、という噂も聞いている。
…こうして、つまらぬ大人の身勝手でアリス達のような可哀相な子供達が増えていく。
ウィディアはそのことが哀しく思えて仕方なかった。
「……先生?」
子供に呼ばれ、ウィディアははっと我に帰った。
「どうしたの?」
「いただきます、まだ?」
「あぁ、今行くわ」
そしてウィディアはその子を連れて、食堂に向かった。
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