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アキラは考えるより先に横に跳んだ。数秒前まで頭があった場所を鉛の弾が通過する。
走りながら先程確認した詳細名簿の、桐山和雄の項目を思い出す。
桐山和雄。香川県城岩町立城岩中学3年B組。
クラスの不良グループのリーダーで中国四国地方有数の富豪の御曹司。跡継ぎとして様々な英才教育を施されている。
幼少時に事故に見舞われて神経細胞の一部を失い、人間らしい感情の殆どを喪失している。
また城岩中学3年B組を対象に行われたプログラムではゲームに乗るか否かをコイントスで決定し、
「――計13人をその手にかけた、か。」
そう。桐山は最後には不意を打たれて倒されたものの、一切の躊躇もなく13人の同級生を殺害し「優勝最有力候補」とまで言われた相手。アキラもそのプロフィールを見たときからトップクラスの危険人物と目していた。
感情の欠落の原因がロスブレインであればなんとか説得できるのでは、とも思った。
しかし相対してその見込みは甘かったと判断せざるを得なかった。
親友・有田幸平の一件では有田は終始罪の意識に苛まれ、自らの罪深さに苦しんでいた。そしてそれ以上に彼との間には朽ちず、褪せない友情があった。故に協力しあうことができたのだ。
対して桐山とは初対面。その上どうやら罪の意識も友情も、彼の心は感知しないらしい。
「なんとか無力化したいけどな…」
使用すれば大きな力となるリングも匣兵器も、使えなければ無用の長物だろう。
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