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入り組んだ路地を走り抜け、時には住宅の庭を突っ切って、桐山に対して直線にならないよう逃げ回る。
桐山が追撃のために放つマシンガンの銃声は、アキラに桐山の位置を教えてくれた。
無人島では人の手が入っていないような道や視界の利かないジャングルを駆けずり回っていたのだ。今更こんな近代的な場所での鬼ごっこでタメ年に遅れは取らない。
それにこちらはデイパックこそ背負っているが手ぶら。桐山は重いマシンガンを両手で抱えている。逃げ切ることはさほど難しくない。
その時まではそう考えていた。
5分ほど逃げ続けたアキラは心中で叫んだ。
(なんで差が拡がらねーんだよー!?)
桐山とアキラの距離は大体100m足らず。桐山はピッタリとくっついて銃を撃ってきている。
互いに走っているためか銃弾がアキラに当たってはいない。しかしアキラのスタミナは桐山よりも確実に少ない。アキラが追いつかれるのは時間の問題と思われた。
それ故にアキラは打開策を考えながら走ることを余儀なくされた。生き残る策を頭に浮かべては消していく。
「(走りながらじゃ考えがまとまらない!もっと現実味のある策は…)…っておわぁっ!」
考え事をしながら走っていたのが災いしたのか、十字路を曲がった所でアキラは転倒した。
地面に打ちつけた右半身から、転んだだけとは思えない激痛が走る。
「クソッ!こんな時に!」
そう思い、立ち上がろうとするアキラだったが右足の感覚がなくて上手くいかない。
思わず右脚に目を遣ると、学生ズボンにいくつもの穴が空いて、穴からは血が吹き出していた。
それを見て初めて撃たれたことに気付いたアキラ。振り返ると50mほど後方、先程曲がった十字路の先。その塀の上に桐山はマシンガンを構えて立っていた。
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