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「笑えねーな。」
H-1砂浜にて。
夜空を見上げながら、そう呟く少年の姿があった。
オレンジの髪に黒の三白眼、そして宋の時代の中華を思わせる衣裳。
替天行道のメンバー、“流星”の戴宗である。
『笑えない』というのも、いきなり拉致られて殺し合えと命令されたからでもある。
だがそれ以上に
「伏魔之剣が無ぇ…。」
ということ。
“伏魔之剣”とは一見すると刃がなく、刀身もボロボロの大剣。クズ鉄と言った方が正確な代物。
しかし彼が使えば話は別。
一度振るえば炎を纏い、神速の斬撃により生じる摩擦熱で灼き斬る宝剣。
また、それは戴宗の里親である洪信が国の依頼で作った、彼の“形見”。
それ故戴宗はこの剣を自らの命より大切にしていた。
リュックには代わりと言わんばかりの長い刀が入っていたが、そんなものでは戴宗の怒りは収まらない。
「あの真っ黒ヤロー…。次見たら土台の黄色いトコも真っ黒に焼き尽くしてやる…。」
あからさまな怒気を振り撒きながら山に向かって歩きだした。
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