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戴宗が怒気を振り撒きながら向かった山の中。
支給されたリュックを漁る男がいた。
「ふむ…。
これが名簿。こちらが地図か。見た事も無い文字だが、書いてある内容は何故か理解できるから問題あるまい。」
納得したように呟くその男の名は左右田 右衛門左衛門(ソウダ エモンザエモン)。
尾張幕府直轄内部監察所総監督補佐にして元忍者。
否定姫の腹心である。
しかし――
『不解』
そんな彼にも理解できない事が多々あった。
この場所はどこなのか、この殺し合いを行う意味、拉致の手段。
だがそれら以上に――
「なぜ生きている?」
自分が生き返っているという謎であった。
事実、彼は虚刀流七代目当主・鑢 七花と戦い、八つ裂きにされて死亡している。
それだけではない。
彼が知り得る他の参加者である真庭鳳凰、真庭喰鮫の両名もまた、鑢七花の手で殺害されている(実際に真庭喰鮫を殺害したのは敦賀迷彩だが、奇策士とがめによって改竄された報告書を読んだだけの右衛門左衛門はその事実を知らない)。
しかし、右衛門左衛門はまだ途中である筈の思考を中断し、真後ろの茂みに声をかけた。
「そこに隠れているのはわかっている。出てこい。
応じなければ、敵と見做す。」
「…上等だよ。」
その返事はおぞましい程の怒気を孕んで返ってきた。
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