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右衛門左衛門の表情が驚愕に染まった。
警戒を怠らなかったのが幸いし、戴宗が放った一閃を回避する事には成功した。
だが問題は戴宗が剣閃を放つのに使用した絶刀『鉋』の状態だ。
『鉋』の刀身は、血のように紅い紅い――
――焔を纏っていた。
絶刀『鉋』は固さに重点が置かれた刀である。ちょっとやそっとの事では傷一つ付ける事すら適わない。
だが、“ただそれだけ”だ。
焔を纏った斬撃を繰り出す事など不可能だ。
「『不解(ワカラズ)』。どういうカラクリだ?」
右衛門左衛門の口から呻くような言葉が紡がれた。
「あ゙?」
「『不快(ココロヨカラズ)』
とぼけるな。絶刀『鉋』はただ頑丈なだけで、火を吹くなどという特性はない。」
しかし戴宗は己の手の内を明かす程の愚か者ではない。
その為――
「気になるっつーなら力ずくで聞き出してみろよ。
勝ったヤツが王(すべて)だ」
――その発言が右衛門左衛門にも火をつけた。
「『不悪(ワルカラズ)』
ならば、お言葉に甘えよう。」
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