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「あーーーーーーーー。だめだ!!!オレ、やっぱヒカルのこと帰したくねぇ……」
そう言って、つないだ手にぎゅっと力がこもる。
「アタシも……デス」
楽しい時間は本当に過ぎるのが早い。このまま時が止まったらどんなにいいか……。
「これからも、ずっと……。オレだけのヒカルでいろよな」
そういうと、先輩はアタシを抱きしめてくれた。優しく強く。ずーっと離さないって全身で言ってくれてる気がして、アタシは胸がきゅんとして少しだけ涙が出た。
何分くらい経ってからだろう……。ふと車の時計を見ると、いつの間にか1時50分になっていた。
「・・・あ、もうそろそろ帰らないと……」
親には亜紀とお昼一緒に食べて2時頃までに帰るって言ってあったから遅れると何かと煩そうだ。
アタシは先輩から離れる前に、ひとつお願いをしてみようかと思った。たいしたことじゃないけど、自分から言うのはちょっと恥ずかしい。
でも……。そうしなきゃ、帰れない。
「サトシ……」
アタシはまたいっぱいいっぱいになりながら先輩を名前で呼んだ。
「あの・・・帰る前に、キス……してクダサイ……」
アタシのいっぱいいっぱいな表現に先輩は目をパチクリしてた。でもすぐに笑ってこういった。
「言われなくてもそうするつもりだけど?」
昨日から数えて何回目のキスかわかんない。でも、帰り際のキスはやっぱりお互い熱が入る。
“離れたくないね”って唇同士も寂しがってる気がした。
「じゃぁ、また……」
アタシは知り合いがいないか周りを確認してからドアを開けて車から降りた。クーラーの効いた車内とは違って、外はやっぱり真夏の熱気でムンとする。
「近々、また会おうな!電話する」
「はい。先輩、帰りも運転気をつけてくださいね!」
「おう、ありがと!じゃぁ……な」
そう言うと、先輩は車を発車させた。
アタシは見えなくなるまで見送って、名残惜しい気持ちを引きずりながら自宅まで歩き出した。
・・・今つけてる大人な下着。親にバレないようにどこで洗濯して干したらいいか考えながら───。
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