天上世界の京の町。

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「んじゃ、説明も終わったことだしそろそろ…。」 そう言って、番人様は立ち上がる。 「え…もう行っちゃうんですか?」 番人様の後を追って、私は縁側に出た。 玄関から入ってくれば良かったのに。 そんな近くに靴を脱ぐから別れが早くなる。 縁側から降りた番人様は、脱ぐ時とは対称的に器用にブーツを履いた。 「そんな顔すんなよ夜空。 何も一生会えないわけじゃないんだぜ?」 一生? 一生って何のこと言ってるの、番人様。 「番人様、一つ質問していいですか?」 「ん?」 「どうしてこの世界で、前回私は輪廻転生したんですか?」 私の言葉に、番人様はふと真顔になる。 「…ペンダントを、渡さなかったからだ。」 どうして? 「簡単な理由で、渡せる代物じゃないのは分かるだろ? 新撰組の幹部ぐらいにしか渡さない。 最初にそれは言ったはずだ。」 じゃあ、何で今回は…? 「例外もあるって言ったよな。 その他の人間、今回お前はそこに入った。」 どうして今回は? 「さっきまで大笑いしていたあいつが、新撰組の奴らを集めて俺と蓮香に頭を下げてきた。 夜空を、輪廻転生させないでくれってな。」 「…うそ…。」 「嘘じゃねぇよ。 お前、早く死んだ分、輪廻転生も早くてな。 少しだけ会って、また離れてを繰り返すのは我慢ならないって言ってさ。」 ふわりと番人様は私の頭を撫でた。 「そういう奴らの集まりだ、やっていけるだろ?」 「…はい。」 「その顔止めろよ、帰りづらくなる。」 番人様は苦笑する。 そして、どこからか鍵を取り出した。 「じゃあな、夜空。」 鍵を空にかかげ、その後ゆっくりと回す。 これで。 こんな簡単に番人様は帰ってしまうの…? 「番人様…。」 光が番人様を包むかと思ったその時、ふっと光が消えた。 …え? どういうこと? 番人様も訳が分からないとばかりに鍵を回すことを繰り返す。 けれど、もう光が出てくることはなかった。 イラついた表情で、番人様は力の限り鍵を回す。 そんなに力を入れたら…! パキィ…っ! かるい音が鳴って、鍵が真っ二つに折れた。 …折れただぁ!? それが合図のように何やら空中に画面が現れる。 「蓮香ぁ~…。」 ゆらりと番人様が画面をにらみつける。 画面に映っていたのは、蓮香と呼ばれるもう一人の番人様。 「あれ、帆波ったら戻ってくるつもりだったの?」 ケラケラ笑って蓮香さんは言った。
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