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「つもりも何も…俺の仕事場はそこだ。」
「あら、じゃあ所属を変えてあげるよ。 今日から帆波の仕事場は、その世界です!」
「ふざけんなぁあ!」
番人様は本気でキレているのに、蓮香さんはまだ笑顔のまま。
「ふざけてないよ? 帆波は今の“あの世”の現状戻したいんでしょ? カウンターは大丈夫だから、そこでとことん仕事しなよ。」
「蓮香! てめぇ…。」
「ヤッホー夜空ちゃん。」
さらりと蓮香さんは受け流した。
ピキピキと番人様のこめかみに青筋が立つ。
「こ、こんにちは。」
「ごめんね~、このバカが帰ろうとして心細かったでしょ?」
「あの…そんなこと…。」
ないと言ったら、嘘になる。
番人様が帰れないっていうのに、喜んでる私がいる。
もし記憶が戻るなら、戻ってない時間は寂しくて仕方ない。
番人様は、この世界で唯一の知り合いだから。
そこから先を言えない私に、蓮香さんは明るく言った。
「これから帆波をよろしくね。」
「え…あ、はい!」
思わず返事をしてしまう。
番人様ににらまれた気がしたけど、でもしょうがないんですよ!
「それとも、帆波もペンダント欲しい?」
「いらない。 俺は消えはしないから。」
ムッスリ怒っている番人様は、もう帰ることを諦めたようで。
何となく、カウンターでの番人様と蓮香さんの力の差が分かった。
「そう。 じゃあ帆波のボックスに必要そうな道具だけ入れとくね。」
「当たり前だボケ。 帰ったら覚えとけ。」
「帰って来られたらいいね、キャハ☆」
いちいちイラつきながら、番人様は何やら画面を操作し始めた。
「もう時間だ。 夜空ちゃん、早く思い出すといいね。」
蓮香さんはその言葉だけ残し、こちらとの更新を断ち切った。
私と番人様の間を、強い風が通り抜ける。
「そういうことだから…夜空、よろしく。」
「よ、よろしくお願いします!」
私たちが改めて挨拶していると、土方さんの部屋からまた笑い声が聞こえた。
「何がおかしい。」
「だってあんなにかっこつけて帰ろうとしたのに…失敗しましたね、えっと、帆波さん?」
「そうだけど?」
総司さんって、笑い上戸なのかな。
すぐ笑うけど…。
とりあえず、私と番人様は土方さんの部屋に戻ることにした。
…総司さんにキレて、またブーツを脱げない番人様を手伝ってから。
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