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バンパイアの艶やかな唇が開かれ、美しい声が言葉を紡ぐ。
『お前は素晴らしい。私の魔法から生き残るとは、人間の範囲を外れている』
『は………なし……て………』
『そうだ、良い事を思いついたぞ。お前に私の力を全てやろう。私は真祖だからな、力には不自由しなくなるはずだ』
嬉しいだろう?とバンパイアは少年に尋ねるが、少年は答えない。
だがバンパイアは愉悦の笑みを浮かべて少年の首筋に噛み付いた。
少年の血液が吸い出され、代わりにバンパイアの血液が注入されてゆく。
満月をバックに、炎に照らされた瓦礫の上で行われた儀式は、ほどなく終わりを迎える。
『…………此れで全部だ。私は死ぬから、君は復讐の相手すら居なくなる。そんな君は生きる意味を見出だせるのか…………楽しませてもらうよ。あと、此れはサービスだ』
そう言って、バンパイアは灰に成って消えた。
少年は転移の魔法陣が展開された地面の上に落ち、視界はホワイトアウトした。
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